特定技能と技能実習の7つの違い
1.制度の目的
特定技能 | 技能実習 |
人手不足を解消する | 発展途上国へ日本の技能や技術を移転する |
特定技能は、人材が集まりにくい分野の技能を持つ外国人を採用する制度で、人手不足解消を目的としています。
技能実習は、日本で技術を学んで母国に帰って技術を伝える、発展途上国への協力が目的の制度です。
特定技能と技能実習にさまざまな違いがあるのは、目的が異なるためといえるでしょう。
2.就業可能な業務
特定技能 | 技能実習 | |
就業できる分野や職種 | 特定技能1号:12分野 特定技能2号:2分野 |
87職種159作業 |
業務に関する知識 | 必要 | 不要 |
単純作業の可否 | 可 | 不可 |
就業できる分野や職種に違いがあり、特定技能1号が12分野、特定技能2号が建設と造船の2分野とされています。
技能実習は、87職種159作業が可能です。
レベルにも違いがあり、特定技能は就労する業務の知識が求められますが、技能実習は知識がなくても問題ありません。
技能実習と比べて、特定技術のほうが高いレベルを求められます。ところが、単純作業ができるかどうかの違いは、少し意外なものかもしれません。
特定技能は単純作業ができますが、技能実習はできないです。特定技能は人手不足を補う目的もあるため、単純作業ができます。しかし、技能実習は技術を身につけるためのものなので、技術が必要ない作業ができないのです。
3.滞在できる在留期間
特定技能 | 技能実習 |
特定技能1号:5年 特定技能2号:無期限 |
技能実習1号:1年 技能実習2号:2年 技能実習3号:2年 |
特定技能1号が滞在できる期間は5年ですが、2号に移行すれば無期限で滞在できます。
技能実習は学んだ技術を母国へ持ち帰ることが目的のため、滞在できる期間が短いです。1号から2号、3号へと移行しても、最長で5年しか滞在できません。
技能実習期間を終えたあとも日本に滞在する方法は、特定技能への移行があります。さらに特定技能1号から2号に移行すれば、技能実習で日本に来た人でも、日本に無期限の滞在が可能です。
4.家族帯同の可否
特定技能 | 技能実習 |
特定技能1号:不可 特定技能2号:配偶者と子は帯同可能 |
不可 |
特定技能1号は日本に家族を呼びよせることが認められていませんが、在留期間に制限がない特定技能2号は配偶者と子どもに限り帯同が認められています。
技能実習は技術を身につけて帰国することが前提なので、1号から3号まですべて家族帯同ができません。
5.転職の可否
特定技能 | 技能実習 |
可能 | 不可能 ※例外あり |
特定技能は労働者なので、転職が認められています。しかし、就労資格なので同一分野であることが転職の条件です。ほかの分野へ転職する場合は、転職先の分野で技能評価試験に合格し、日本語能力試験4級以上に合格しなければなりません。
技能実習の目的は技術の習得と実習なので、転職は認められません。例外的に受け入れ先の変更ができるのは、倒産などで実習を続けることが困難になった場合です。そのほか、2号から3号に移行する際には、受け入れ先の変更が認められるケースがあります。
6.受け入れ可能な人数
特定技能 | 技能実習 |
人数制限なし ※建設と介護は制限あり | 人数制限あり |
特定技能の目的が人手不足解消なので、建設と介護の分野以外では、受け入れ人数に制限がありません。
技能実習では、技能の習得が必要です。適切な指導ができるよう、受け入れ企業の従業員数に応じた人数制限があります。
7.受け入れ方法
特定技能 | 技能実習 | |
受け入れ方法 | 制限なし ※技能試験と日本語試験に合格した人 |
国外から |
関与する団体 | 自社で支援できる場合は関与しない 登録支援機関への委託が可能 |
送り出し機関、監理団体 |
特定技能の受け入れには制限がなく、国外からでも国内に居住している人でも採用できます。募集や採用は自社でできるので、人材紹介会社を利用するかどうかも自由です。
技能実習の受け入れは、国外の送り出し機関と国内の監理団体を通さなければなりません。必然的に、技能実習生の採用は国外からとなります。
特定技能のメリットとデメリット
メリット
受け入れ人数の制限が無い
日本人の採用と同じように、不足している人数を採用できます。
外部コストを抑えられる
自社で募集や採用ができ、外部の団体に関与しなくても良いので、コストを抑えられます。
受け入れに関する事務作業が少ない
在留資格審査の書類を準備するなど、多少の事務作業が必要ですが、技能実習よりも大幅に少ないです。
就労までの期間が短い
国外から採用する必要がなく、既に日本に住んでいる外国人を採用できます。在留資格などの手続きをしなくても良いので、都合が合えばすぐに就労が可能です。
即戦力化しやすい
特定技能で就労するには、就労する業務の知識が必要です。受け入れ企業のやり方を覚えれば、即戦力として期待できるでしょう。
日本語能力が高め
日本語試験に合格しなければ特定技能で就労できないため、日本語能力が高いです。
業務の幅が広い
技能実習は単純作業ができませんが、業務の幅が広い特定技能は単純作業もできます。たとえば飲食店の調理の仕事の場合、接客や掃除も可能です。
デメリット
人材の確保が難しい
特定技能は人手不足解消のための即戦力として働く制度なので、技能試験と日本語試験に合格しなければなりません。就労を希望する外国人であれば誰でもよいわけではないので、人材が集まりにくいです。また、海外での試験が限定されていることも、人材の確保を難しくしています。
(ミャンマーであれば、外食・介護・農業・宿泊であれば比較的人材を確保しやすいです)
早期退職の可能性がある
特定技能は転職できるので、退職してしまう可能性があります。特定技能の受け入れ企業は人手不足が深刻なので、いつ辞めるかわからないのは大きなデメリットといえるでしょう。
企業都合で解雇できない
能力が不足している場合でも、企業の都合での解雇ができません。採用する際には、しっかりと能力を見極める必要があります。
技能実習のメリットとデメリット
メリット
人材を確保しやすい
送り出し機関に委託するため、高い確率で希望する人数を確保してもらえます。
在留期間が決まっているので安定しやすい
技能実習は、3年間同じ受け入れ先企業で実習をします。いつまで何人いるのかがわかっているので、採用の計画が立てやすいです。
また、人数の安定だけでなく、関係性を築きやすく人間関係での安定もメリットといえるでしょう。
特定技能へ移行することでさらに在留期間を伸ばすことが可能
技能実習では、原則として5年間の在留期間が限られています。しかし、特定技能に移行することで、さらに最長5年の在留期間が認められます。
特定技能への移行は、日本でのキャリアアップを目指す技能実習生にとって、大きなメリットとなります。
デメリット
外部コストが高い
技能実習生の渡航費用や在留資格申請にかかる費用、送り出し機関や監理団体へ支払う費用など、さまざまなコストがかかります。
受け入れに関する事務作業が多い
外国人技能実習機構から認定を受けるための申請、在留資格の申請など事務作業が多いです。受け入れ後にも、実施状況報告書を毎年提出しなければなりません。
従事できる業務が少ない
技能実習は技能の習得が目的のため、技能の習得が必要ない誰にでもできる業務ができません。自動車整備の技能実習生には、整備以外の接客や清掃をさせてはいけないのです。
どちらの制度で受け入れるかで迷っているなら
外国人労働者を雇う時、技能実習制度と特定技能制度の2つの選び方があります。どちらを選ぶかは、やってもらいたい仕事の内容や職種で決まります。
技能実習制度は、できる仕事がとても細かく決められています。決められた仕事以外や簡単すぎる仕事はできません。
特定技能制度は、いろいろな仕事を頼めます。簡単な仕事も含めて、幅広く仕事を任せられます。
費用や書類の手続きを考えると、特定技能制度の方が安くて簡単です。
なので、特別な理由がなければ、特定技能制度を使うことをおすすめします。
特定技能制度は、会社にとっても働く人にとっても便利な選び方です。