建設現場で働く従業員に、外国人が多く見られるようになってきました。その理由は、技能実習生が増えたから。
最近ニュースなどでもよく聞くようになった技能実習生ですが、これは詳しくはどういうものなのでしょうか。実際に、技能実習生を受け入れたいと考えている建設業の人にもわかりやすいよう、そのプロセスもあわせてご紹介していきます。
技能実習制度とは
技能実習制度とは、外国人が日本で技能を身に付けるために学ぶ制度のこと。もともと、母国では就業しづらい外国人が日本に出稼ぎにくるというケースは見られたのですが、この制度は最終的に母国に戻って活躍することを目的として作られています。つまり、日本で身に着けた技能を生かして母国で働けるようにするという制度。国際貢献を理念とした制度です。
実際、技能実習生は10年で1000%増加するほどの勢いで受け入れられていて、とくに建設業ではなんと外国人労働者のうち70%が技能実習生。これにより、人手不足だった建設業も、技能実習生のおかげで持ち直したといえます。
技能実習生が従事できる作業
建設業の技能実習生は現場作業に従事しますが、すべての業務に就けるわけではありません。
それでも、技能実習2号を取って技能検定に合格し、技能移行評価で認定を受ければ、建具制作や建築大工、とび、左官や各種施工など22職種に従事することが出来るようになります。
建設業者が技能実習生を受け入れるためには
建設業者が技能実習生を受け入れるためには、いくつかの条件やステップをクリアする必要があります。
たとえば、建設業法第3条に基づいたき建設業許可を受けること。本来、企業の規模によって。建設業許可は必須ではありません。しかし、技能実習生を受け入れるのであれば、建設業許可が必要になるのです。
ほかにも、7つのポイントがあります。
1.外国人が欠格事由に該当しないことを確認すること
建設業に限ったことではありませんが、技能実習生を受け入れる前に、その外国人が法律で定められた4つの欠格事由に該当しないかどうかを確認する必要があります。
1つは、法律違反による刑罰を受けた。2つ目は技能実習法に関係する処分を受けた。3つ目が本人の行為能力や役員等に適格性がない。そして最後が暴力団関係とつながりがある。
これら4つに該当しないことを確認しなければなりません。
2.監理団体に加入すること
技能実習生の雇用には、団体監理型と企業単独型の2種類があります。このうち企業単独型とは、自社の海外支店などから職員を雇用すること。しかし、このタイプは少数の大企業のみが行っており、通常は団体監理型となります。
団体監理型とは、技能実習生の募集や受け入れを担ってくれる監理団体に加入すること。技能実習生を受け入れる企業の97%がこの団体監理型です。
3.責任者と指導員を配置すること
技能実習生を受け入れるためには、技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員がそれぞれ必要です。
実習生に技能修得のための指導をするのが技能実習指導員、日本で生活する上での指導をしたり相談に乗ったりするのが生活指導員、そしてその監督となるのが技能実習責任者です。
4.技能実習生の住居を用意する
技能実習生を受け入れるためには、住居を提供しなくてはなりません。社宅があれば問題ないですが、なければ民間の賃貸物件を借りておきましょう。
また、生活する上で必要となる最低限の家具や、Wi-Fiなどの生活インフラも必要です。
5.日本人と同等の給与を支払うこと
技能実習生の賃金は、月給制にしなければなりません。たとえ、同業種の日本人が日給制や週給制であったとしても、技能実習生は月給一択。そして総額は日本人と同額以上にすることが定められています。
また、社会保険の加入も必須です。任意の保険としては、外国人技能実習生総合保険などがあります。
6.帳簿、日誌を作成・保管すること
技能実習生を受け入れる場合は、技能実習日誌と認定計画の履行状況に係る管理簿を作成しなくてはなりません。技能実習日誌は技能実習生への指導内容を記録するもの、認定計画の履行状況に係る管理簿は技能実習の状況を管理するもので、それぞれ技能実習修了後も1年間の保管義務があります。
7.建設キャリアアップシステムに登録すること
建設キャリアアップシステムとは、能者ひとり一人の就業実績や資格などを登録するシステムのこと。このシステムに、企業と技能実習生、両方が登録する必要があります。とくに企業は、実習生を受け入れる前に登録を済ませておかなければなりません。
よくある疑問
建設業者が技能実習生を受け入れる際に、よくある質問をまとめました。
技能実習生の労働期間は?
技能実習生の労働期間は、最大で3年もしくは5年です。
技能実習制度は、技能実習1号から2号、3号とステップアップできるのですが、このうち技能実習3号を提供できるのは優良認定を受けた企業のみ。1号から3号の分類は技能実習1年目が1号、2~3年目が2号、4~5年目が3号となり、それぞれの移行には技能検定を受ける必要があります。
技能実習生の人数制限は?
技能実習生を受け入れられる人数は決まっていて、技能実習1号は基本人数枠まで。技能実習2号がその倍です。
そして基本人数枠は、企業の常勤職員の人数によって変わってきます。たとえば、常勤職員が50人以下の企業であれば、技能実習生はその10分の1。つまり、常勤職員41~50人の企業では、技能実習生は5人です。
また、常勤職員が50人以上であれば、職員100人までは6人、200人までなら10人、300人まででは15人の技能実習生が受け入れられます。そして、常勤職員が300人を超える企業の場合は、その20分の1の人数が受け入れ可能です。
ちなみに、常勤職員が30人以下の場合は一律で3人までと決められていますが、技能実習生の数が職員を上回ることはできません。職員が2人しかいないのに、3人受け入れることはできないのです。ただし、優良認定を受けた企業であれば、職員2人に対して3人の技能実習生を受け入れることも可能です。
優良認定を受けるためには?
優良認定とは、外国人技能実習機構に優良要件適合申告書が受領された企業のこと。その企業は優良な実習実施者とされ、技能実習3号への移行が可能になったり、受け入れられる技能実習生の数が増えたりします。
技能実習3号では、他社の技能実習生を受け入れることも可能です。
技能実習生の雇用にかかる費用は?
技能実習生の雇用には、給与のほかに渡航費、講習費、検定受験費などの教育費用が必要です。また、監理団体への加入費、在留資格の申請費用なども加わるので、技能実習生1名につき、3年間で70万円、5年間で100万円ほどが必要。その他、監理団体に支払う費用も月に2万5千円~4万円ほどかかります。
技能実習生の失踪を防ぐには?
技能実習生が失踪したというニュースを目にすることがありますが、このほとんどは賃金に問題があったり、長時間労働が強いられたり、暴力などがあったりが原因。
そのため、これを防ぐのは難しいことではありません。労働基準法や技能実習法に沿い、実習生が働きやすい環境を整えればいいのです。
技能実習生の受け入れから入社まで
技能実習生を受け入れるのなら、まずは監理団体への加入が必要です。
加入すれば、監理団体から実習希望者の情報提供を受けることができるので、それを元に面接を行いましょう。
そして採用者が決まったら、次は技能実習計画。技能実習の進め方を決めて書類化し、採用者と企業の情報を添えて技能実習計画認定申請を行います。申請が通れば次は在留資格の申請。これらは、監理団体がサポートをしてくれます。
在留資格が通れば、技能実習生の受け入れ。ただし、入国してすぐに技能実習が始まるのではなく、まずは監理団体の研修を受けることになります。この研修で1か月ほど日本語や日本での生活の基礎を学べば、一連の過程は終了し、就労開始となります。採用が決まってから実際に働きはじめるまでは、大体半年ほどかかります。
プロセスや条件を並べると、色々とややこしく感じるかもしれません。とはいえ、その内容に難しいことはなにもないです。いわば、当たり前のものがほとんど。
技能実習生を受け入れるために、とくに高いハードルはないので、もしも建設業で人手不足に悩んでいるのなら、技能実習生の受け入れを考えてみてはいかがでしょうか。