最近では、技能実習生や特定技能など、ますます外国人が働きやすい環境になってきました。しかし外国人労働者が増えるにつれて、さまざまな問題も浮き彫りになってきました。今回は特に大きな3つの問題について、対策とともに考えていきたいと思います。
1.労働環境が悪い
現状
自国よりも就労しやすいなどの理由により、日本で働くことを希望する外国人労働者ですが、それでも決して労働環境がいいというわけではありません。たとえば、日本人労働者と比べて賃金が低かったり、長時間労働を強いられたりというのも珍しくないのです。
ほかにも賃金未払いやいじめ、パワハラなど、外国人労働者にとってその労働環境は決して快適とはいえず、残業時間が既定の上限を超えていたり、賃金が最低賃金に満たなかったりという訴えがあとを絶ちません。
もっとも多い違反事項は、労働時間の超過と安全基準違反で、ともに20%を超えています。
次いで賃金の未払いや、残業時などの割増賃金が適用されないなど、報酬に関する問題がそれぞれ10~15%ほど。それだけでなく、労働基準関連法令については約70%の企業が外国人労働者に対してなんらかの違反をおこなっているという結果が出ているのです。
こういった問題が起こる理由はさまざまでしょうが、その根本にある原因は人権意識だといわれています。外国人労働者に対する人権意識が、日本人労働者に対するものと比べて低いということ。
雇用主にとっては、外国人労働者は人手不足を補うための労働力でしかなく、そのために情報を充分に与えなかったり、身分の不安定さにつけ込んだりしてしまう。たとえば、労働条件について詳しく知らされない外国人労働者は、労働基準法の知識もありません。そのため、賃金が最低額に満たなかったり、労働時間が規定を超えていたりしても、それが法令違反だということがわからないのでしょう。
また外国人労働者にとって、もっとも大事な身分証明であるパスポートを雇用主に預けることが雇用条件とされるケースもあります。こうなると、たとえ不当な条件であることに気づいても、なかなか抗議の声は上げられません。似たような事例に、在留資格を更新するために不当な労働条件にサインさせられることもあるようです。
労働環境を改善する対策
外国人労働者に対する労働環境をよくするためには、まず、当事者である外国人労働者の声を集めることです。当事者から問題の内容や状況、背景などを聞き、その上でどのような取り組みを行うべきか、改善するためにはどうすればいいかを考えましょう。
また、そもそも問題があることに気づいていない外国人労働者もいます。これは、圧倒的に情報や知識が不足しているため。ですから、外国人労働者に対して、賃金や労働時間などの条件、労働基準法についてきちんと説明することが大切です。
2.コミュニケーションがとりにくい
現状
2つ目の問題としては、外国人労働者と日本人労働者、雇用主とのコミュニケーションが難しいことです。言葉や文化がちがうために、お互いに言いたいことがうまく伝えられなかったり、当たり前だと思っていることが合わなかったりするのです。これはストレスの元になりますし、場合によっては思いもよらないトラブルにもつながるでしょう。
言葉がわからないのですから、労働者同士がうまくコミュニケーションできないのは仕方がないことなのかもしれません。問題は、雇用側にフォロー体制が整っていないこと。充分なサポートができていないことです。それに加えて、必要以上に距離を置くなど、日本人労働者の接し方にも問題があるといえるでしょう。
コミュニケーション対策
対策としては、日本人労働者向けに研修を行うことが挙げられます。それぞれの文化の違いや、コミュニケーションの取り方について学ぶ機会を設け、日本人労働者の意識改革を図りましょう。
また、外国人労働者に向けて定期的な面談をおこない、悩みや不安について直接聞き取りをすることも大切です。
3.地域住民の理解がない
現状
外国人労働者の問題は、社内に限ったことではありません。地域によっては外国人の人口が少なく、そういったところでは外国人労働者に対して差別的な態度がとられることも珍しくないのです。
実際、NHKが行った調査でも、近隣に外国人が増えることについて否定的な人が4割近くいることがわかっています。
その理由の1つは犯罪が増えたり、規律が乱れたりなどの治安の悪化。
このように、地域に外国人への不信感があれば、それだけで外国人労働者は肩身の狭い思いをしてしまいます。それだけでなく、外国人労働者を雇用する企業にも良くないイメージを持たれてしまうかもしれません。
住民の理解を得るなら
外国人労働者を地域住民に受け入れてもらうためには、地元の行事への参加が効果的です。これは、民間の調査で、実際に外国人と接したことがある人のほうが外国人の受け入れに対して前向きであることがわかっているから。つまり、イベントやボランティアなど、地域の行事に外国人労働者と一緒に参加して、地域住民と接する機会を持てば理解を得られやすいということなのです。
このように、外国人労働者を取り巻く問題はまだまだあります。技能実習生や特定技能外国人など、制度は充実してきていますが、それでも実際の労働環境がよくなければ、なかなか長続きはしないでしょう。大切なのは、外国人労働者にとって働きやすい環境を整えること。それぞれがそれぞれの立場を尊重し、問題を1つずつ片付けていくようにしたいものです。