これから技能実習制度を利用して海外の実習生を受け入れる際に検討したいのが、監理団体と企業単独型のどちらを利用して受け入れるのかどうかです。
監理団体や企業単独型にはさまざまな違いがあるので、事前にどんな違いがあるのか知る必要性があります。スムーズかつ柔軟に技能実習生を受け入れられるようにするためにも、監理団体と企業単独型のどちらがいいのかじっくり検討することが大切です。
技能実習における監理団体とは?
技能実習における監理団体型とは、企業が技能実習生も受け入れを検討する際に監理団体に依頼することにより、海外での技能実習生の受け入れや各種手続きなどを行う組織です。
監理団体は技能実習生に関する業務が行えるように、法務大臣や厚生労働大臣から許可を得て業務を行う非営利団体として活動しています。
そもそも技能実習生の受け入れ方式には団体監理型と企業単独型の2種類がありますが、団体管理型の場合は監理団体による支援やサポートがないと技能実習生が受け入れられない仕組みになっているのが特徴です。
つまり、団体監理型で技能実習生を受け入れている場合は、必ず何らかの監理団体に加盟していると言えるでしょう。
監理団体の主な業務
監理団体の主な業務は、以下の通りです。
- 定期監査
- 臨時監査
- 訪問指導
- 技能実習生の受け入れ業務
定期監査と臨時監査の監査業務は、基本的に技能実習生を受け入れる企業等が提出した技能実習計画に基づいた実習がしっかり行われているかを確認するものです。定期監査は3カ月に1回行われ、監査を行った後の結果は実習を実施する企業の住民地を管轄している地方事務所や支所の指導課に監査報告書と監査実施概要を提出して報告されます。
また、技能実習が適切に行われていないと疑われる要素があった場合は臨時監査を行って審議のほどを確かめるのがポイントです。
訪問指導とは定期監査とは別に行う業務であり、管理責任者の指揮の下、1ヶ月最低1回は技能実習の実施状況を確認し、認定された技能実習計画に基づく技能実習ができるように指導します。
実習生の受け入れ業務とは、以下の業務を行うものです。
- 送り出し機関の選定と契約
- 送り出し国での面接同行
- 受け入れ企業の技能実習計画作成に対する指導
- 技能実習生の入国手続き
- 入国後講習
- 技能実習生の保護・支援
以上の業務が監理団体の主な業務となっているため、技能実習生の受け入れを検討している企業にとって非常に利便性が高いと言えるでしょう。
悪質な監理団体には要注意!
監理団体を選ぶ際に注意したいのが、悪質な監理団体が存在することです。
監理団体の中には実態が存在しないペーパー団体が存在するとされており、悪質な監理団体に依頼してしまうと、元々監理団体が適切に機能していないので実習先で悪質な人権侵害が発生するといった問題が起こる可能性があります。
もちろん適切に機能していない監理団体は発見され次第すぐに監理団体の許可が取り消されますが、それでも悪質な監理団体の存在が根絶されることはありません。
しっかり役割が果たせる監理団体でないと、受け入れる技能実習生の質が低かったり失踪したりする恐れがあるため、どんな監理団体が信用できるのか知る必要性があるでしょう。
監理団体の選び方
監理団体の選び方は、以下の通りです。
- 複数の管理団体を比較する
- 監理団体としての許可を得ているか確認する
- 希望する国・地域の実習生が扱えるか確認する
それでは、監理団体の選び方についてご説明しましょう。
複数の監理団体を比較する
良質な監理団体を選ぶには、複数の監理団体を比較することが大切です。
監理団体によって適切に機能しているかどうかが違う上に、費用の相場やそれぞれの監理団体が果たせる役割も大きく違います。それぞれの監理団体を比較するだけでもさまざまな情報が得られるため、信用できるかどうかも分かるでしょう。
特に注意したいのは、提示される費用の目安です。
依頼する側としては当然ながら費用が安いに越したことはないかもしれませんが、安ければいいというものではありません。ペーパー団体を初めとする悪質な監理団体は他の監理団体と比べて明らかの費用が安く提示されていることが多い傾向にあります。
費用だけでなく、どんな監査を行うのか内容をしっかりと確認することが大切です。
監理団体としての許可を得ているか確認する
監理団体としての許可を得ているかどうかも忘れずに確認しましょう。
監理団体として活動するには、外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律により、法務大臣と厚生労働大臣から監理団体としての許可を得なければなりません。
監理団体としての許可を得る際に必要な要件は、以下の通りです。
- 営利を目的としない法人であること
- 監理事業を適正に行える能力を有していること
- 監理事業を行うに足りる財政的基盤を有していること
- 監理事業で知り得た個人情報を適正に管理する措置をとっていること
- 中立的な立場で実習実務者へ指導・監修できる体制をとっていること
- 送出国政府の認定を受けた送出機関と契約を結んでいること
以上の要件を満たすと共に、優良要件適合申告の計算において150点満点中90点を取っていることが条件です。
ここまでやって監理団体の許可を得ることができるため、許可を得ているかどうかを確認しましょう。
希望する国・地域の実習生が扱えるか確認する
監理団体を選ぶにあたって注意したいのが、監理団体によって現地の国の機関と繋がっているかが違うことです。
どの国でもいいから技能実習生を受け入れたいのであれば話は別ですが、ある程度受け入れたい国や地域が決まっている場合は現地機関を繋がっている監理団体を選ぶ必要性があります。
また、同時に監理団体によって指導できる職種や作業も違うため、迎え入れる職種や作業内容に関する実績を持つ監理団体を選ぶことも大切です。
監理団体型のメリット
監理団体型には以下のメリットがあります。
- 海外に事業所がなくても、受け入れが可能
- 通訳スタッフによる言語サポート
- 監理団体による巡回や監督で技能実習が透明化できる
- 手続きや講習などを監理団体に代行してもらえるため、技能実習実施に集中できる
監理団体型は基本的に海外に事業所がなくても技能実習生の受け入れができるので、海外に事業所がない企業が技能実習生を受け入れる唯一の手段になります。
組合専属の通訳スタッフが言語サポートしてくれるため、現地の言葉が分からなくても技能実習生の受け入れに支障が出ることもありません。さらに、監理団体による巡回や監督が徹底して行われるので、透明化された技能実習によって実習生も安心して実習に励める環境だと言えます。
手続きや講習などは監理団体に代行してもらえるので面倒な業務を行う必要性がないため、技能実習を行う準備や実施に集中できるのも大きなポイントです。
技能実習における企業単独型とは?
技能実習における企業単独型とは、監理団体を通さずに企業が直接技能実習生を受け入れられるのが最大の特徴です。
本来であれば監理団体がさまざまな受け入れ業務等を行ってくれますが、企業単独型の場合は実習生のビザの手配から入国後講習、技能実習まで全ての業務を企業で行うことになります。
企業単独型で技能実習生を受け入れるには、以下のいずれかの海外事業所があることが条件です。
- 現地の法律に基づいて設立された法人
- 複数の企業が共同で出資した法人
- 議決権の過半数を所有する会社
- 議決権の20%以上を所有する会社
また、企業単独型にはメリットやデメリットがあるので、事前にチェックしましょう。
企業単独型のメリット
企業単独型のメリットは、以下の通りです。
- 監理費用が発生しない
- どんな技能実習生なのかチェックできる
- 実習が修了した後もそのまま働いてもらうことができる
- 日本語が話せる人材として重宝する
企業単独型は監理団体を通さずに技能実習生を受け入れるので、監理団体に依頼する際の費用が発生しません。
費用が大きく抑えられる上に、実習が修了した後も契約終了とならず、そのまま働いてもらうことができます。事前にどんな技能実習生なのか経歴や人柄などが確認できるので受け入れる実習生の取捨選択が可能です。
また、日本語が話せる人材として、現地での橋渡し役にもなってくれるので海外進出も視野に入れることができるでしょう。
企業単独型のデメリット
企業単独型のデメリットは、監理団体が行っていた全ての業務を企業が行わなければならないことです。
送り出し機関の選定と契約、送り出し国での面接同行、技能実習生の入国手続き、入国後講習などを初めとする業務を全て一手に引き受けて行わなければならないため、必然的に膨大な量の業務をこなさなければなりません。
しかも海外に事業所がなければ利用できない方法なので、基本的に監理団体の利用一択になるでしょう。
監理団体型を利用している企業がほとんどなのも、海外に事業所を持っていないからです。